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私たちアトピー当事者はアトピー対策とQOL向上の対策を同時にする必要がある

私たちアトピー当事者はアトピー対策とQOL向上の対策を同時にする必要がある

アトピー人生33年目。気がついたときからアトピー体質で、アトピー症状がほとんどない時期もあったけど、全く痒みも痛みも炎症もアトピー乾燥肌も色素沈着もない、いわゆる「アトピー体質じゃない」日を生きたことは今のところはない。

これだけ長く当事者として生きていると、アトピーに慣れるというか、左右されずに行きる術が身についても良いはずなのに、未だに自分のQOLはアトピーの影響を受け続けている。きっと多くの当事者の方が同じではないだろうか。

そのQOLとアトピーについて、去年までの自分の様子やサロン活動を通じて分かったことがある。細かくは沢山あるが、大きくは3つに整理できる。

①症状の程度とQOLの程度は必ずしも比例しない

②自分のQOLはアトピーによって悪い影響を受けることは確かだが、どれだけ深刻にアトピーの影響を受けているかは自分ですら認知できない。

③自分のQOLの低さはアトピーそのものというよりも、アトピーによって脳の働きが低下しているからかもしれない。

以下、この3つについて順に説明していこう。

①症状の程度とQOLの低さは必ずしも比例しない

サロンを始めて2年くらいになるが、アトピー症状が目で確認できるレベル以上の方とお話した回数は、100回は優に上回る。そのお話の中でQOLについて自己評価してもらったり、ストレスチェックのデバイスを通じて、客観的に脳波の状態を調べたりして、総合的にQOLの程度を把握することをしている。

たいていの方は症状とQOLは比例するが、しばしば症状が軽くてもQOLが低かったり(ストレス度数が高い)、あるいは、皮膚が苔癬化している方でも、ストレスがそれほど高くない方々がいる。およそ10人に2-3人の割合で、そのようなケースが見受けられる。

つまり、症状は確かにQOLを下げる要因になるが、それは要因の1つでしかありえない。そして、恐らくその要因の比重が大きいか小さいかは、自分の感覚の問題であり、つまりは脳が判断している。

②自分のQOLはアトピーによって悪い影響を受けることは確かだが、どれだけ深刻にアトピーの影響を受けているかは自分ですら認知できない。

心理学と行動経済学の第一人者でTEDにも何度も登壇しているデューク大学のダン・アリエリー(Dan Ariely)氏は、講演のなかで「人の直感は間違うことが多い」ということを度々主張している。

また私たちの感情の多くは無意識や潜在意識に左右されていて、なぜそう感じるのかは、自分に問いかけたところできちんと知ることができない。

これらから言えることは、私たちアトピー当事者がしばしば陥りやすい
「アトピーのせいで自分は幸せな人生を送れない」
「◯◯がうまくいかないのはアトピーのせいだ」
というような考え方は、本当にアトピーが起因しているかは証明しようがない。

ということは、一部の不幸せは本当にアトピーそのものが起因しているかもしれないが、アトピーから派生した別の問題によって脳が「不幸せ」だと処理してる可能性が多いにある。

そして、その別の問題がどれだけ深刻に自分のQOLに影響を与えているかは、自分で認知することができない。

③自分のQOLの低さはアトピーそのものというよりも、アトピーによって脳の働きが低下しているからかもしれない。

アトピーが悪化すると、掻き壊しのせいで体のあちこちが痛くなるから体を丸めるようになって、いわゆる猫背になりやすい。

汗は長期的にみると良いと分かっていても、しみたり瞬間痒みが強くなるから運動も億劫になる。

顔の症状がひどくなると、人目が気になり、明るい時間帯に外に出るのが怖くなる。

中度以上のアトピーを経験している人なら、恐らく皆一度は、こういった状態になるのではないだろうか。

こういう状態になると、家のなかで1日のほとんどを寝てるなり座っているなり、同じ姿勢で何時間も過ごすことになる。

これは重度のときは仕方がないことではあるが、問題なのは、脳の習性により、このときの習慣が、重度から中度以下になっていく過程でも、維持されがちであるということだ。

精神科&心療内科の医師である廣瀬久益氏によると、人は体が動かなくなると動かなくなるほど、体がだるくなっていき、億劫さも増していき、これがあるレベルになると、「自分はもう動けない」といった思い込みが強固になり、いわゆるうつ病のような状態になるという。

つまり、アトピーのせいでQOLが低いと思っている人の多くは、アトピーによって姿勢が悪くなり、動くことを制限し、日光を避けることによって脳がうつ病のような状態になっている可能性が高い。なかには本当にうつ病になっている人もいるかもしれない。

①〜③を要約すると、


アトピー症状とQOLの程度は必ずしも比例しない。そしてQOLの低さは、アトピーそのものというよりは、脳の働きが正常でないという問題が大きいかもしれない。しかし私たちはそれをはっきりと認知することは難しい。

と言えるだろう。

私たちにはアトピー症状を改善する対策と、QOLを改善する対策が必要である

上記の内容を踏まえて言えることは、私たちはアトピー症状の対策と、QOL向上のための対策を、別々にかつ同時に取り入れる必要がある、という事だ。


だが残念なことに、アトピー症状を完治させる方法も、うつ病(うつ様行動)を完治する方法も、今のところはまだ確立されていない。

しかし、どちらも「緩和」させる方法は、すでに世の中には複数存在しているので、それらを上手にバランス良く組み合わせることが大切で、その先にきっとアトピーからの解放が訪れる。

去年までの自分もそうであったが、アトピー当事者は日々の症状に意識がとらわれがちで、例えば保湿をするとか、痒みを抑えるために◯◯を制限するとかといったことは、一生懸命に取り組むが、QOL向上のための対策は忘れがちである。

そのためには、「アトピー」というキーワードだけでなく、「うつ病」「QOL改善」といったキーワードで情報収集をすることが大切である。実際にはうつ病でなくても、脳の状態を良くする為には、こういったキーワードで情報を積極的に取りにいき、自分に合った対策を取り入れる必要があるだろう。

アトピーはつくづく奇妙な病気だ

アトピーはただ皮膚疾患と定義するにはあまりにも悪化要因が多様だ。

皮膚に炎症が起きるという点では「皮膚疾患」に間違いないのだが、症状にともなう「痒い」という感覚は脳が判断している以上、アトピーと脳は切っても切り離せない。

「痒み」を引き起こす原因が今なお完全に解明されていない以上、何が痒みに繋がるのか、そのなかでQOLの程度と痒みの関係性はどれくらい密接なのかは明らかになっていない。

でも私たち当事者は、恐らくそれらは「深く密接している」と思っている。

とはいえ、アトピー対策をしつつQOL改善の対策もすることは、簡単なことではない。それは終わることのない、かつ、予測できない痒みによって、脳が良くない影響を受け続けてしまうからだ。

この記事を書いている自分も、ここ半年近くメンタルケアとして、それなりに勉強したり、カウンセリングを受けたりしているが、まだまだ課題は山積みだ。

それでも去年までよりはQOLが格段に良くなっていて、行動範囲も広がり、感情の起伏が少ない。自分にとってその変化の価値はとても大きく、今後も積極的にメンタルケアを取り入れたいと考えている。

最後に、自分が色々試すなかで1つ気付いたことがある。それは、アトピー&メンタル対策を取り入れる順番は意外に大事だ、ということだ。この点については次回にまた述べたいと思う。

 

■ 参考:
TED – ダン・アリエリー:我々は本当に自分で決めているのか?(December 2008)

YouTube – 新宿オーピー廣瀬クリニック:動かないとうつ病のようになる(2013/11/02) 

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