日韓アトピーフォーラム-日韓の当事者交流会レポート

先日、韓国ソウルで開催された日韓アトピー患者フォーラムに参加&発表してきました。今回はそのレポートです。

このフォーラムは、韓国の患者団体であるatopystarの代表パク・サンヒョンさんがソウル市の支援のもと企画したものです。

■ atopystar
atopystar

– 2014年〜。代表のパクさんのお兄さんが重度のアトピーを経験していて、ご本人も軽度のアトピー当事者。2014年のアトピー親子心中事件(後述の韓国アトピー事情参照)がきっかけで、本格的にソウルで活動を始める。
– 会員属性:アトピー当事者及びその家族
– 活動内容:ソウル市内・付近のアトピーに優しいレストランの情報を集約してブログに掲載している。定期的に患者会やイベントの開催なども行っている。今後より活動の幅を広げるため、近く法人化予定。
– url(韓国語のみ) : http://blog.naver.com/atopy_star

■ イベント概要

“This forum is designed and organized by AtopyStar, the youth team that was formed by atopic patients and their families. AtopyStar runs the programs and self-help groups for the healthy and balanced life of atopic patients. The groups and associations working for improving atopic patients’ quality of life in Korea and Japan will be gathered for the forum. This forum will be a chance to discuss various topics and issues such as how we deal with the difficulties that atopic patients are suffering in daily life and how we can fix and raise social awareness.”

▲ 引用元:http://youthhubconference2016.net/partners_session#article-284

もともとパクさんと交流があったこともあり、有難く声をかけて頂きました。
さらに予算的に日本からもう一団体招待できるとの事だったので、今回のフォーラムの趣旨に一番合いそうな、アトピーフリーコムさんを推薦し、代表の有田さんと一緒に参加することになりました。

■アトピーフリーコム
アトピーフリーコム
▲ スクショ元:アトピーフリーコムのHP

– 2004年〜。日本で最も長く活動している東京のアトピー任意団体。「ステロイドはもっと慎重に利用されるべき」という思想のもと発足された団体。現在はステロイドやアトピー全般に関する情報発信や、当事者同士の交流の場を提供している。
– 会員属性:主に中度〜重度を経験しているアトピー当事者
– 活動内容:定期的に会報誌を作成して配布している。当事者や研究者、医師など様々な属性の方々に寄稿した情報が集約されている。北海道の豊富温泉にて毎年定期的にフォーラムを開催しているほか、東京でも4ヶ月に一度、飯田橋で患者同士が交流できる場を設けている。不定期にフォーラムや食事会なども企画している。
– url:http://atopyfree.web.fc2.com/index.html

また、フォーラムの会場となった「青年ハブ」は、ソウル市が積極的に市民活動をする若者の為に無料で提供している施設で、今回のフォーラムは、この施設自体のイベントの一つとして企画されたものです。
▶ 青年ハブHP(日本語) https://youthhub.kr/japanese

発表者は、untickle、アトピーフリーコムさん、アトピースターさんの他に、韓国でやはり最も歴史のあるアトピー患者団体であるアトピー学校の4団体と、特別枠として、韓国の国立大学KAISTで痒みを記録するデバイスを研究しているリ・ジョンインさんの計5人。参加者は15人程度でした。

■アトピー学校
アトピー学校
▲ スクショ元:アトピー学校のHP

– 2000年~。登録会員数は4万人を超える韓国最大のアトピーコミュニティ。
– 活動内容:ネットコミュニティの運営、患者会、イベント企画など。オンライン上での情報交換の場の提供が主であるが、料理教室や勉強会など、オフライン活動にも積極的に力を入れている団体。また企業と連携して、当事者の本格的な改善プログラムの企画にも携わる。
– url(韓国語のみ): http://cafe.daum.net/atopy

フォーラムのプログラムは、

1部:各団体の取り組み内容及び実績などの発表 (日本の団体は日本のアトピー事情も含める)
2部:ワークショップ(各団体が一つずつテーマを出し、参加者みんながポストイットを使ってアイデアを出し合う)
3部:質疑応答

というもので、とても充実した内容でした。

atopystar
▲ 今回のフォーラムを企画したatopystarパク代表。当日も素晴らしい司会進行力でした。韓国アトピー界期待のホープです! ©-1

atopystar
▲ atopystarは特に「アトピーと食事」にフォーカスをあてています。企画力・行動力共にあるパクさん率いるatopystarが今後どのような活動を展開していくのか注目です。©-1

アトピー学校
▲ 韓国最大のコミュニティアトピー学校の代表パク・スンビンさん。とても誠実かつ物腰の柔らかい方です。©-1

アトピー学校
▲ 普段は別の仕事をしながら、アトピー学校を運営されています。新しいコンテンツへの取り組みにも前向きで、今後アトピー学校の更なる成長が期待されます。©-1

アトピーフリーコム
▲ アトピーフリーコムの代表有田さん。韓国語が全く分からないなか、英語の資料や過去の会報誌、日本のアトピー書籍などを用意し、日本のアトピー事情などについて、とても分かりやすく発表されていました。©-1

アトピーフリーコム
▲ 同時通訳のキム・キファンさんとの連携もばっちりで、そのお陰で短い時間ながらも有意義な情報交換ができたとのこと。©-1

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▲ KAISTのあるテジョンからこの日のためにソウルに来たリ・ジョンインさん。(だいたい東京と伊豆くらいの距離)IoT技術を使って痒みを可視化する研究を日々しています。研究成果が楽しみ!©-1

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▲ 2部のワークショップでは、みんな真剣かつ和気藹々の雰囲気でアイデア出しを行いました。©-1

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▲ 壁に貼られたテーマに、自分の意見を書いたポストイットを貼っていきます。©-1

アトピーフリーコム
▲ 一通りアイデアを出した後は、みんなでレビューを。©-1

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▲ よくある「フォーラム = 発表の場」「患者会 = 情報交換会」という形から一歩進んだコンテンツを取り入れたatopystarパクさんの企画力に拍手です。©-1

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▲ 記念に発表者+運営メンバーでパチリ。©-1

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▲ 3部の質疑応答では、両国へのアトピー事情に関する質問が絶え間なく飛び交いました。©-1

アトピーフリーコム
▲ 時間が足りない、と思うくらいの質疑応答が飛び交う様子から、国境を越えた患者交流の場が今後もっと増えていくべきだと感じました。©-2

なお、フォーラムの様子は他団体のサイトでも記事になっているので、興味ある方は見てみてください。(文は韓国語ですが、写真が沢山あります)
http://youthhubconference2016.net/news/1209
http://cafe.daum.net/atopy/7jd/62404

日韓におけるアトピー事情の比較

韓国のアトピー事情は、以前からuntickleとして情報収集&発信をしていますが、今一度、韓国のアトピー事情を要約しておきます。

・韓国のアトピー人口は約150~200万人であり、増加傾向にある。

・韓国ではアトピーに対して、皮膚科学会が定める標準治療の他に、韓医学研究院が定める治療方針が存在する

・2014年1月に母子家庭で、重度のアトピー症状を患っていた8歳の娘の首を締めて殺したうえ、自分も自殺するという事件が発生。遺書の内容から、娘のひどく悪化したアトピーを改善できないことへの焦りや自責によって、ノイローゼ状態が極限になり、心中に至ったことが推察され、この事が韓国主要メディアに大きく取り上げられる。これを機に政府も本格的にアトピー対策に動き出す。

・政府、企業、医師が、アトピーは深刻な問題である、という認識のもと、対策に取り組んでいる状態

・皮膚科学会の標準治療はステロイドを利用したものであるが、政府としても当事者の認識としても、「ステロイドは一時的に使うことは有効であるが、自己免疫疾患である以上、内側の体質を変えることが必要だ」ということを公言している。

そして、個人的に今回のフォーラムで新たに発見した点としては、

1. 韓国は日本よりもアトピー情報の混乱が起きている可能性が高い。

2. 日本は標準治療に対して、「脱ステ」という概念が比較的、確率・体系化されている方であるが、韓国ではあまり確率・体系化されていない。実際に「脱ステ」という言葉自体も使われていない。

という点でした。

1に関しては、韓国が日本よりもIT大国であり、国民全体がネットリテラシーが高めとは言え、それを上回る情報の混乱が進んでいるという点が一つ理由として挙げられます。

2に関しては、個人的な見解としては、日本よりも韓(漢)医学の文化が根強くあるため、「脱ステ = 韓(漢)医学」という風に捉えられている気がしています。そのため、「脱ステ」というアプローチに関して新たに開拓するというよりは、昔から身近にある韓(漢)医学を活用しているのでは、と考えます。

一方、日本の場合、漢医学の文化がそれほど根付いていないため、似た思想を持つ医師や研究者たちが、新たに「ステロイドを使わない」治療法を研究し集約する必要があり、結果として「脱ステ」という言葉が当事者の間でも浸透したのではないか、と推測しています。

もちろん、どちらが良いという話ではなく、この比較が個人的にはとても興味深く、国によってアトピーに対するアプローチ方法が違うんだ、という事を再認識することができました。

同時に、untickleとしては、将来的に日本人の当事者が韓国の漢方治療を受けたり、韓国人(外国人)の当事者が日本に治療しに来る、という仕組みが必要だ、と思っています。それは、自分に合うアトピー対策が自国にあるとは限らないからです。

海外のアトピー事情を知ることの意義

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▲ 韓国式ハートポーズ。今後もっと日韓で患者同士の交流が増えるといいなぁと思います。©-1

今回のフォーラムは、日本と韓国の当事者団体の架け橋ができた事、そして「アトピー情報を整理する」というuntickleの概念が韓国のアトピー当事者にも役にたち得る、ということを実感できたという点で、とても良い経験となりました。

アトピーは現在も世界レベルで増加傾向にあるなか、どんどん研究・解明が進んでいます。数十年後、もしかしから数年後には、アトピーが簡単に治せる時代が来るかもしれません。創業時にはそんな未来がとてもぼやけていたのですが、最近ではそれが具現化されつつあるのを感じていて、個人的にわくわくしています。

ただ、その未来が来るまでは、私たち当事者は今の苦しみや不便さを抱えながらどうにか生活しなくてはいけません。その対策のためには、まず当事者自身がアトピーに対しての知見を深めることが必要です。その意味で、今回のような当事者が主体となった国際的な交流の場は意義があったと思っています。日本でも来年当事者主体の国際フォーラムを開催できたら良いなぁと思いながらも、その準備で自分のアトピー悪化しそうと心配しております。実現…できるかなw

※ 当記事に使用しているフォーラムの画像は、全て他団体から合意の上利用させてもらっています。
©-1提供元 : atopystar
©-2提供元 : アトピーフリーコム

この記事を書いた人

野村 千代
野村 千代
untickle発起人。生まれつきアトピーで重度の症状により過熟白内障を患い失明状態に。その後も症状の悪化により3度社会生活を中断。2013年に本格的なアトピー改善に取り組むも、情報混乱のせいでなかなか自分に合う対策法が見つからず、苦労したことがきっかけで、untickleを立ち上げる。
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