アトピーの人は農薬についてきちんと知ったうえで食べ物を選ぶべき

当事者の皆さんは日々口にする食べ物を選ぶ際、農薬についてどれだけ意識しているでしょうか?

私は生まれてからずっとアトピーである事もあり、昔からある程度農薬については気にしていて、なるべく摂取しないよう無農薬・オーガニックの食べ物を選ぶようにしています。農薬については別に詳しい訳でもなく、ただ漠然と「農薬はアトピーに良くない」という意識だけは昔から持っていました。

ですが漠然とした知識では、中途半端な対策しかできない訳で、私の重度こじらせアトピーを改善させる為には、「アトピーと農薬」についてしっかり調べる必要がある、と思い調査を決意。頭を整理するがてら、現時点で収集できている情報をまとめてみました。

当事者として知っておきたい農薬についての基礎知識

農薬1
農薬というのは、主な目的として、病気や害虫から外見の美しさを守るために使われています。国も積極的に農薬の使用を推奨していて、2014年9月時点で農林水産省が使用・販売を許可している農薬数は、4300を越えています。

“我が国は温暖で湿潤な気象条件であり、病気や害虫が発生しやすいことから、国内で農産物を安定して生産するためには、必要な範囲で農薬を使用できるようにしておくことが重要である” – [1]

“平成26農薬年度(平成25年10月1日~平成26年9月30日)中の新規登録件数は171件、新規登録された有効成分の種類は12種類(殺虫剤4、殺菌剤4、除草剤2、その他2)であり、同農薬年度末現在の有効登録件数は、4339件。登録有効性分数は563種類となった。” – [2]

もちろんこれは、日本だけでなく、世界の特に発展途上国の農業においても同じ基本姿勢です。実際農薬の市場は、世界的に増加していて、日本では近年横ばいではあるものの、かなりの規模となっています。

“2014年の世界の農薬市場規模は前年比4・5%増の566億5500万ドル、円換算では約6兆8000億円になる。これに非農耕地用農薬も加えれば632億1200万ドル、約7兆6000億円である。10年ほど前は300億ドル台だっただけに、2倍近くに増大したことになる。” – [3]

“日本の農薬市場は年間3300億円 – 3400億円で推移している。” – [3]

ちなみに農薬を開発するには、医薬品と同じくらいの莫大なコストがかかるそう。

“農薬の新規有効成分を一剤開発するには10年以上の歳月と100億円以上の研究開発費が必要と言われる。” – [3]

残留農薬はアトピーにどこまで悪影響を与えるか

農薬2
現代では、私たちが口にする食べ物のほとんどには農薬が使われています。この農薬は基本は農作物を育てる過程で無くなりますが、商品化する時点でも少なからず残っています。

ただしこの残留農薬に関しては、農水省が2006年にポジティブリスト制を導入し、昔よりも厳しく規制しています。よって近年の日本において、一般的には残留農薬による健康被害が起きる可能性は低い、というのが国の大方の見解です。

問題なのは、私たちアトピー当事者は、この「一般的なケース」に当てはまらない可能性がある、という点です。そしてその可能性は、症状が重度化するにつれ高くなります。

個人的に、これは「アトピーと化粧品」の関係に似ていると思っています。具体的には、化粧品も商品化するにあたり厳しい基準が設けられていますが、重度の当事者にとってはほとんどが刺激が強すぎて、使用すると悪化に繋がり得ます。

実際、農薬に詳しい有識者も、これについて過去(2006年)に同じように言及しています。

“農薬の研究開発においては,すべての農薬候補化合物につきまして,アレルギーやアトピーを引き起こすか否かの動物試験が義務づけられております.皮膚・眼刺激性試験,皮膚感作性試験,あるいは一般薬理試験の一部がそれに相当します.もし,動物試験でアレルギー性やアトピー性の兆候が認められた場合には,通常,その化合物は農薬の候補から外されます.したがいまして,農薬がアレルギーやアトピーの原因になるのは極めてまれと考えられます.ただし,アレルギー反応やアトピー反応に極めて敏感な人も存在し,動物試験で陰性でも,ごく一部の人にアレルギー反応やアトピー反応が現れる可能性は否定できません.” – [4]

ポジティブリスト制が導入されてからは、「残留農薬に深刻な悪影響を受けるアトピー当事者」の数は減少傾向にあるのかもしれないですが、私たち当事者はこのリスクがゼロでは無いということを知っておく必要があります。

当事者が知っておきたい農薬の飛散について

農薬3
「農薬中毒」という言葉は、農業にあまり詳しくない方はあまり知らないかもしれません。簡単に言うと「農薬によって起こる身体の異常」のことです。

中毒症状は農薬の種類によって様々ですが、アトピーにも関連しうる農薬の数は、農薬商工会の資料で報告されているものだけでも、10に至ります。

①カルタップ剤・チオシクラム剤・ベンスルタップ剤(殺虫剤)- 皮膚の発赤,かぶれ
②ジチオカーバメート剤(殺虫剤,殺菌剤)- 発疹,瘙痒感,アレルギー性皮膚炎(太陽光線により増悪)
③有機塩素剤 / その他(殺菌剤)- 露出部(顔,眼,耳など)のかぶれ(瘙痒感,紅斑,発疹)
④有機ひ素剤(殺菌剤)- 全身性剥離脱性皮膚炎様発疹,色素沈着,角化症
⑤ペンタクロルフェノール剤(殺菌剤・除草剤)- 皮膚炎(通常,濃度10%以上の製品に触れた場合)
⑥イミノクタジン剤(殺菌剤)- 軽度の炎症
⑦フェノキシ剤(除草剤,植調剤)- 皮膚粘膜刺激による皮膚障害
⑧アニリン系除草剤 – 皮膚刺激(皮膚に付着した場合)
⑨石灰硫黄合剤(殺菌剤,殺虫剤)- 発赤, 皮膚付着部の疼痛, 皮膚・粘膜のびらん,皮下組織の炎症,深達性皮膚潰瘍炎(皮膚に付着した場合)
⑩メタアルデヒド剤(殺虫剤)- 皮膚炎 – [5]

この農薬中毒は、主には農薬を使っている農家さんに関する問題ですが、農薬が風などにより飛散することによって、農家以外の方にも起こり得ます。

“飛散の到達範囲は一概に言えないが、量的に問題になりやすいのは、小規模な散布の場合10m程度まで、大規模な散布では50m程度までのエリアである。” – [6]

“近隣に公共施設がある場合、飛散してあ農薬が大量に流入すると水質汚染になるだけでなく魚介類に被害を及ぼすこともある。” – [6]

“飲料水源に近い場合は農薬の種類を問わず注意が必要である” – [6]

“周辺に養蜂や桑園がある時には、ミツバチや蚕等に対する危被害防止の観点も重要となる” – [6]

この農薬の飛散問題に関しては、農水省の定める農薬規制と啓蒙活動によって年々改善傾向にあるものの、「農家じゃなくても農薬の飛散によってアトピーが悪化する」可能性は少なからずあると言えます。

農薬はアトピーの改善・悪化に繋がる免疫に影響し得る

農薬4
残留農薬にせよ、飛散農薬にせよ、どれだけ避けようと意識したとしても、現代において私たちは少なからず毎日摂取し続けています。

よって私たち当事者は、アトピー改善のために、悪化要因になり得る農薬をなるべく体内に入れないようにするだけでなく、体内に入った農薬は短い期間で排出するように心がけた方が良い、と言えます。特に重度の方の場合は、両方の対策の質にもこだわる方が良いかと思います。

農薬の摂取を避ける方法に関しては、なるべく無農薬や有機のものを選ぶとか、お酢や貝殻をつかって取り除くなどの方法があります。

飛散農薬に関しては、今のところ残念ながら自分が悪影響を受けているのかを認識することすら難しく、摂取量を減らすという意味では、あまり対策の術がない状況です。

一方、体内に入った農薬を排出するというのは、汗をかく、水分などを沢山摂取してトイレに回数を増やすなどのいわゆるデトックスに繋がる方法のことです。

いずれも当事者の方は、自分の症状や環境、性格などを考慮し、無理なく毎日続けられる方法で、農薬対策を行うべきである、というのが私の考えです。

今回の調査のなかで一番驚いたのは、アトピーと農薬に関連した日本の論文データが、私が調べた限りほとんど無いという点でした。

口に入れる食べ物が免疫に重要な影響を与える以上、その食べ物の質に差し響く農薬がアトピーに与える影響についても、当然研究が必要だと考えます。この研究がもっと進むことを願いながら、引き続きアトピーと農薬含めた農業について調べていきたいと思います。

引用・参照元:
[1] 農薬コーナー(農林水産省HP) http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/
[2] 農薬の登録状況(平成26年度)(GREEN JAPAN, 2014.09.30) http://www.greenjapan.co.jp/n_torokjokyo26.htm
[3] 農薬企業は世界を視野に事業拡大を(化学工業日報, 2015.04.24) http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2015/04/24-20002.html
[4] 『農薬とは』その安全性を考える 農薬Q&A -農薬の安全性に関する疑問に答える-(梅津憲治, 大塚化学ホールディングス㈱, 2006) http://www.pssj2.jp/2015/overview/Q&A.pdf
[5] 農薬中毒の症状と治療法(農薬工業会, 2016.04) http://www.jcpa.or.jp/labo/pdf/2016/poisoning16.pdf
[6] 農薬飛散対策技術マニュアル(農林水産省, 2010.03) http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_nouyaku/manual/pdf/all.pdf

この記事を書いた人

野村 千代
野村 千代
untickle発起人。生まれつきアトピーで重度の症状により過熟白内障を患い失明状態に。その後も症状の悪化により3度社会生活を中断。2013年に本格的なアトピー改善に取り組むも、情報混乱のせいでなかなか自分に合う対策法が見つからず、苦労したことがきっかけで、untickleを立ち上げる。
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