アトピーは当事者だけでなく経済にも数十億円以上の深刻な損失を与えている

(いつもの事ながら)久しぶりの更新になってしまいました。今年も夏の季節がやってきましたね。とにかく夏に弱い私は何とか倒れずに過ごしたい・・!と願うばかりです。

ところで最近、untickleに当事者の方やママさんからの問い合わせ頻度が増えてきています。
と言っても私自身がまだ中〜重度の症状を抱えているので、こうすればあなたの症状は改善する!といったアドバイスは到底できません。その方のアトピー体験談を聞き、当事者ならではの痛みや苦しみを共有し合い、最後に私自身の経験とuntickleデータからその方が求める対策情報に極力近いものをいくつか選択肢としてお伝えしています。私は今も療養を続けながらuntickleの活動をしているため、一つ一つの問い合わせにすぐお返事をすることは難しいのですが、極力対応するようにしています。

アトピーは当事者の命以外の全てを奪いうる

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新しい当事者仲間との直接交流が増えてからというもの、改めてアトピーという疾患の深刻さに自分の事ながら胸を痛めることが多いです。
アトピーはそれ自体は死に至る病気ではないけれども、重症化するにつれ当事者の人生を残酷に翻弄し、生き地獄にします。その生き地獄は短くて数ヶ月、大抵は1〜3年くらい続きます。

例えば先日お会いした方は、顔アトピーの重症化によって会社を辞めた後、メンタルが追い詰められ、精神病院に3ヶ月入院したとのこと。現在は回復傾向にあるものの、まだ薬物治療を続けていらっしゃいます。

また私は過去にはアトピーが原因で視力を失っていますし(厳密には左:測定不可と右:0.01)、去年重症化したときは、上の方と同じくメンタルが追い詰められ(痛くて寝たきりだったという事もありますが)、外を歩くことができず、部屋の明かりも極度に怖くなり24時間薄暗い空間でしか過ごせないという状態が半年ほど続きました。今でも部屋が明るいと落ち着かない為、家にいるときはずっと薄暗い空間にしています。

アトピーによる経済損失は実はとても大きい

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このようにアトピーが深刻化すると、当事者は皮膚がボロボロ状態になるだけでなく、視力やメンタルなどに深刻な影響をもたらします。これは、つまり重症アトピー当事者の多くは、普通に社会生活を送ることがとても難しい状態になることを意味しています。実際、私がこれまで出会った重症経験者約30人のほぼ全員が一定期間、正常な社会生活を送れていませんでした。

この問題がどれ位深刻かをイメージする為に、ちょっと強引に統計数字を考えてみることにします。
寝たきり状態=1日20時間以上横たわる状態を一ヶ月以上送る状態、と定義する
日本のアトピー人口は推定600万人
当事者の100人に1人が寝たきりを経験しているとする
→ 約1万2千人が寝たきり生活を経験していることに
さらに強引に、
彼らの平均年収を440万円とする
寝たきりの期間の収入をゼロとする
→ 約40億8千万円以上の損失
となります。

これはあくまでも私個人のざっくり仮説ですが、私がお伝えしたかったことは「アトピーによる社会・経済損失は思った以上に深刻である」ということです。
実際、これに関連する論文も過去に発表されています。

“成人患者の1/5はADが職業選択に影響したとしている。Graham-Brownは「ADは、世界各国の健康管理計画において、その経済的、社会的損失が実際よりも安く見積もられている」と指摘した。”

※引用元:成人におけるアトピー性皮膚炎をめぐる問題と治療(American Academy of Dermatology, 2000)

“ドイツの調査では、アトピー性皮膚炎の治療や労働生産性
の障害による経済損失は、年間15~35億ユーロ(約2,000
~4,600億円)と報告されている (Wollenberg A, Br J Dermatol 2008)”

※引用元:アトピー性皮膚炎について(京都府立医科大学皮膚科 加藤則人)

“アレルギー性皮膚疾患罹患による経済的な損失は我々の試算で4700億円/月、アレルギー性鼻炎では荻野らの検討で7200億円/月である。”

※引用元:アレルギー疾患のダイナミックな変化とその背景因子の横断的解析による
医療経済の改善効果に関する調査研究
(大阪大学医学部皮膚科 片山一朗, 2011)
※アトピーはアレルギー性皮膚炎に属します。

問題解決には当事者、医師、企業、政府の連携が必須

協力
今回私がリサーチがてらこの記事を書こうと思ったのは、アトピーによって身体がボロボロになり生き地獄を経験している方々の存在を少しでも世間に客観的に伝え、改善に繋げたいと思ったからです。

ただこういうデータを調べる度に思うことですが、アトピーに関する客観的データがとにかく少ないなという印象です。アトピーという疾患は現状を把握することすら困難であり、だからこそ医師や企業、政府がなかなか対策・改善にのりだしにくいのだろうと思います。

一方でアトピーはただ当事者だけが努力しても到底解決できないと思っています。
家族などのサポート以外にも医師、製薬会社やメーカーといった企業、政府が今のアトピーの現状を認識し、当事者と一緒に対策に取り組まなければ、当事者を取り巻く環境は大きく変わらないでしょう。ただその医師や企業、政府を動かす方法は残念ながら署名活動だけでは不十分です。

今回のリサーチ結果を受けて、untickleとしても今後これらのデータをもとに積極的にメーカー、医師、政府の順にアプローチをし、対立ではなく協力の関係を築いていけたらと思います。

この記事を書いた人

野村 千代
野村 千代
untickle発起人。生まれつきアトピーで重度の症状により過熟白内障を患い失明状態に。その後も症状の悪化により3度社会生活を中断。2013年に本格的なアトピー改善に取り組むも、情報混乱のせいでなかなか自分に合う対策法が見つからず、苦労したことがきっかけで、untickleを立ち上げる。
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